Story 01
大切な靴を預けていただける喜び
ある日、男性が持ってこられたムーンスターのウォーキングシューズ。一目でかなり履き込まれていると分かります。それに加え、両足とも親指の部分に穴があき、履き口はほつれ、ソールはすっかりすり減っていました。
お話を伺うと、わたしどものところへ来る前にもいくつかの修理店で断られたとのこと。ダメ元で私どものところへお問い合わせいただきました。修理は難しいことが想像でき、新しく購入する選択肢もありながら、あえて修理に出されるということは、非常に思入れの強い靴なのだろうと察せられました。断らない修理をモットーとしている「かみとり」。もちろんお引き受けさせていただきました。
ソールを全面張り替え、アッパーは作り直し、履き口も布からやぶれにくい革に変更、などなど。ほぼ新品同様に直せました。修理完了後、引き取りに来られた時のお客様の感激した顔が今も忘れられません。靴修理をしていて一番嬉しい瞬間です。
お客様から、その晩は嬉しくて枕元に靴を置いておやすみになられたと、後日メールをいただき、私も感激しました。その後も何度もご依頼いただいております。
Story 02
お客様の声に耳を傾けて
愛用されて10年のビジネスシューズ。ソールがかなり薄くなってきたので、メーカーに修理のお見積もりを取られたそうなのですが、あいにく予算オーバー。なんとかできないかと、お問い合わせいただきました。
靴をぱっと拝見して、これはオールソールの交換が必要と感じましたが、それではやはり予算に合いません。そこで別の方法をご提案。
土踏まずの部分はそこまですり減っておらず元のソールを活かせそうでしたので、つま先とかかと部分のみを張り替えることでご予算に合わせることができました。元のソールに似たデザインの素材を選び、オリジナルと同様のステッチを入れることで、オールソールでなくても元の状態に近づけることができました。
わたしたちが大切にしていることは、お客様の履き続けたいという気持ちに寄り添い、その上でお客様一人ひとりのご要望にお答えすることです。そのために職人たちは自分の技術や知識に慢心することなく、研鑽を続けていくことが大切だと考えています。
Story 03
心地よく履いていただくために
シャネルのエスパドリーユのスリッポンシューズのご依頼。靴の履き口が甲にあたって、長時間履くことが出来ないので、どうにかならないかとのこと。他店で断られ続けたそうですが、どうにか履けるようにしたいと、ご連絡いただきました。
「靴修理かみとり」では修理でなく、快適に履くための調整もお引き受けしています。私どもの職人たちは靴修理だけではなく、靴の製造の知識・技術も持っています。
スタッフ間でどうしたら快適に履けるようになるか、考えられる修理方法を検討し、いくつかご提案しました。そして硬い布でできている履き口を足になじみやすい革にする方法を試すことに。直した後、実際に履いていただいたところ、痛くなくなったということで一安心しました。
私たちも「これが絶対」と言い切ることができない時もあります。その場合は修理方法を何通りかご提案させていただき、お客様のご意見もうかがいながら、納得していただいたうえで修理・調整を進めております。
Story 04
より長く愛用していただくために
トッズのドライビングシューズの修理ご依頼。ソールにゴムの突起が並ぶ独特なデザインの靴です。突起がすべてつぶれてしまい、つま先とかかとがすり減っていて張り替えが必要でしたが、メーカーでは修理できないとのこと。
同じデザインのソールをご用意することはできませんでしたが、なるべく靴の雰囲気に合うように、ハーフソール交換とかかとゴム交換を行いました。お客様のご希望をお聞きして、これ以上つま先とかかと部分の擦り切れ(削れ)が悪化しにくいように、新設したソールを少し出し気味にすることで、地面に触れにくくし、削れにくいようにしました。
同様のデザインの靴では、新品の状態でこのような処理をすることも、長く履いていただくのには有効です。
ただ直せば良いと言う考えではなく、身に付ける人の気持ちや長く履いていただけるように、今後のことも考えて修理することを心がけています。
Story 05
今後の修理も考えて
セルジオロッジのパンプスのヒールかかとゴム交換とハーフソールの貼り付けのご依頼。ご依頼としてはよくある内容ですが、他店で断られてしまったとのこと。その理由は、かかとゴムのヒールに差し込むピンの先端が折れ、ヒールの中に残ってしまい、新しいゴムを差し込むことができなかったからです。このようなご依頼も、もちろんお引き受けいたします。
残ってしまった先端をピンの太さより細いドリルを使って粉砕し、取り除くことで修理ができました。このようにしておけば、今後、お客様のお近くの修理店でも受け付けてもらえるはずです。
ハーフソールは靴の雰囲気やデザインに合うようにオリジナルのグレーに近い色のものを選びました。
見た目も重要ですが、今後の修理や靴の状態も考えて修理することを心がけています。
Story 06
ノーとは言わない
グッチのブーツのご依頼。元々、一足を大事に履かれるお客様のようで、「チェーン店などに出したくない。長く履けるようにちゃんと直して欲しい。」そのような思いから、修理店を探され、「靴修理かみとり」に依頼していただきました。
お気に入りの一足だったそうですが、ソールやヒールの素材が全て劣化してクッキーのようにボロボロの状態。オールソール交換が必要でした。誰に聞いても修理は無理だと言われたそうでしたが、似た素材を探し、できる限り雰囲気をオリジナルに近づくように心がけました。ソールの色は近い色の2つから選んでいただき、オリジナルより少し濃い色で貼り直しました。
修理したことによって、まだまだ履いていただけるようになったと思います。お客様も仕上がりに満足していただけて、私も嬉しく思いました。
物理的に無理な事もあるかもしれませんが、ノーと言わず、まずは現物をお預かりして考え、できる限りの修理をするよう心がけております。